研究概要 |
アスコルビン酸はビタミンCとしてよく知られている物質である。植物では、特に光合成器官で活発にアスコルビン酸を生合成しており、数mMから数十mMという高濃度でアスコルビン酸を含有している。これまでに、アスコルビン酸生合成の最終段階を触媒すると考えられているL-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ(L-Galactono-1,4-lactone dehydrogenase, GalLDH)に着目し、研究を行ってきている。双子葉植物であるタバコから、GalLDHのcDNAをクローニングするとともに、GalLDHを過剰発現させた形質転換タバコ細胞を作成した。得られた形質転換タバコ細胞はGalLDHを高発現した結果、アスコルビン酸含量が増大した。一方、単子葉植物については、そのアスコルビン酸生合成についてはほとんどわかっていない。そこで応用的観点から、まず単子葉モデル植物であるイネのアスコルビン酸の生合成について研究を行った。まず、RT-PCRにより、GalLDH cDNAをクローニングした。得られたイネGalLDHの推定アミノ酸配列について相同性検索をした結果、双子葉植物のものと高い相同性を示し、GalLDHは植物界において高く保存されていることがわかった。成系路を明らかにするため、イネにアスコルビン酸の前駆体となり得ると考えられる9種類の化学物質を添加し、組織レベルのアスコルビン酸含量の変動を調べた。その解析結果から、単子葉植物であるイネにおいても双子葉植物と同様のアスコルビン酸生合成経路を持つことが明らかとなった。また、細胞内のアスコルビン酸が増大すると、根の伸長が促進することがわかった。さらに、組織レベルのアスコルビン酸含量の増加は、UV照射によって引き起こされるクロロフィルの分解を抑制することも示された。
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