研究概要 |
(1)熱ショックのin vitroシュミレーションによるHrcA-DNA複合体の熱安定性の調査 HrcAを大腸菌で発現させ、精製後、様々な温度でのHrcAタンパク質の変性を光散乱光度分析により調べた。その結果、CIRCEを含むプラスミドpTY-1が共存すると、HrcAタンパク質は複合体を形成して可溶化されることが判った。この複合体は、元株であるB. thermoglucosidasiusの至適生育温度(60℃)以下では安定に存在したが、その温度を超えると急激に安定性を失うことが判った。また中温菌B. subtilisのHrcAを同様に調べると、生育温度を越える50℃で凝集が生じることが判った。このことは、生育温度を境に、HrcA複合体が破壊され熱ショック応答のスイッチが入るというモデルを裏付ける結果である。 (2)HrcAタンパク質のDNA結合領域の特定 HrcAタンパク質の高次構造予測を行い、DNA結合モチーフであるヘリックス-ターン-ヘリックスを特定した。この中の保存性の高い塩基性アミノ酸Lys31とArg43に注目し、それぞれPro及びAspに置換した変異タンパク質(K31P及びR43D)を作成し、精製後、CIRCE結合能をゲルシフト分析法で比較した。K31P及びR43Dは、それぞれ1/3、1/16にHrcAタンパク質との結合能を低下させていることが判り、認識ヘリックスと呼ばれる領域が、CIRCEとの結合に重要であることが明らかになった。さらに前出のヘリックスのN-末端と予測されるArg27に着目し、これをProまたはGluに置換変異させると、DNA結合能が著しく向上した。Pro, Gluの残基が共にヘッリクス形成残基として、Argより効果的に機能したと予想され、機能領域が予想通りであることが判った。
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