研究概要 |
Pho85と結合する10種のサイクリンそれぞれとPho85との融合タンパク質をPho85の代りに発現する酵母株を作製し、その性質を調べた。その結果、PHO5の発現抑制はPho85-Pho80、グリコーゲンの正常な代謝はPho85-Pcl8をそれぞれ発現している株でのみ見られることがわかった。これらの結果はPho85キナーゼの特定の機能には特定のサイクリンとの組み合わせが必要であることを示している。一方、Pho85-Pclを発現している株の中でPHO5の脱抑制が不完全なものが見られたが、PHO80を欠失させることにより完全な脱抑制が見られるようになった。またG1サイクリンのCLN1とCLN2が欠失しているときにPHO85は生育に必須となるが、cln1 cln2二重欠失株でPho85-Pclを発現している株からさらにPHO80を欠失させることで、Pho85-Pc11を発現している株だけが生育できることがわかった。これらのことはPho80がPcl-Pho85融合蛋白質に結合している可能性を示している。また融合蛋白質のPho4に対する活性を試験管内リン酸化により調べたところ、Pho85-Pho80が最も強く、Pho85-Pcl8は最も弱かった。 PHO85およびPHO85-PCLをテトラサイクリンリプレッサー誘導体により誘導発現する系を構築した。この系をPho85 Pho80二重欠失株中に導入し、ドキシサイクリン添加により発現誘導後、0、1,2,4時間後にmRNAを抽出し、cDNAからcRNAに変換してジーンチップ解析を行い、PHO85およびPHO85-PCL融合蛋白質の標的の探索を試みた。PHO85およびPHO85-PHO80発現誘導時で発現量が変化する遺伝子を調べた結果、PHO85の発現誘導時にのみ発現量が変化する遺伝子が見いだされた。このことはこのアプローチにより特定のサイクリンとの複合体によって制御される遺伝子を見つけることができることを示している。
|