脳虚血疾患血、アルツハイマー病およびパーキンソン病等の中枢疾患における神経細胞死は、急性期を除き長期間ストレス下におかれた場合に進行するアポトーシスにより誘導されると考えられている。これらの疾患のうち、パーキンソン病治療薬のリード化合物のスクリーニングを行った結果、パーキンソン病の病態促進させる_L-DOPA毒性よりPC12細胞を保護する新規物質halxazoneを発見した。本物質は、低濃度で細胞保護活性を示し、脂質過酸化反応を阻害したことから抗酸化活性を有することが判明した。そこで、ビタミンE等他の抗酸化物質に関して_L-DOPA毒性抑制活性を検討したが全く効果が見られなかった。そのため、ESRを用いて抗酸化物質について_L-DOPA毒性抑制メカニズムを検討したところ、halxazoneのみが_L-DOPAで誘導されるラジカル産生を特異的に抑制することが判明し、カテコール酸化に特異的に作用することが示唆された。現在本物質についてさらに詳細なメカニズムについて検討する予定である。脳虚血疾患に関しては、新規グルタミン酸レセプターアンタゴニストkaitocephalinについて、大量サンプル供給を目指した全合成を行い、世界で初めて全絶対立体が一致した化合物の合成に成功した。さらに、本物質について作用解析を行ったところ、これまで定説と考えられていたメカニズムとは異なる経路により、神経細胞死が誘導されることを見出し、現在詳細な作用メカニズムについて検討中である。その他のターゲットとして、アルツハイマー病について小胞体ストレスに基づくスクリーニング系を構築し、微生物代謝産物についてスクリーニングを行った結果、新規分子シャペロン誘導阻害物質versipelostatinを見出した。本物質の、神経細胞に対する効果を検討した結果、アルツハイマー病のモデルと同様な神経細胞死を誘導することが判明し、本物質を用いることによりアルツハイマー病が小胞体ストレスによって発症することを強く示唆することが可能となった。
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