研究概要 |
スクアレン環化酵素(ホペン合成酵素,SHC)とオキシドスクアレン環化酵素(ラノステロール合成酵素,LaOSC)の大きな相違点として以下の2点があげられる。 1.スクアレン環化酵素の基質特異性が低く、スクアレン(SQ)を基質とするばかりではなく、(3R)-及び(3S)-オキシドスクアレン(OXSQ)も基質として認識し、各々ホペン、3α-ヒドロキシホペンや3β-ヒドロキシホペンを与える。この基質特異性は何に起因するか? 2.スクアレン環化酵素の生成物はB環が椅子型になるが、一方ラノステロール合成酵素はB環が舟型になる。この生成物の構造の作りわけは、酵素のどの要因で行われるのか? これらの点について以下の成果を得た。 1.本研究の主目的のキメラ型酵素の作成を考案するうえで、両者のアミノ酸のアライメントを比較したところ、SHCの600番目のGlyがLaOSCには欠損していることが判明した。SHCのGLY600欠損型の変異酵素(キメラ型)を作成した。この変異酵素はLaOSCと類似の基質選択性を与えた。即ち、SQや(3R)-OXSQは反応せず,ラノステロール合成酵素に特異的な(3S)-OXSQ)のみが反応した。本研究成果を日本農芸化学化学会(2003,4)で発表予定である。 2.SQ基質のフォールデングは基質と結合するアミノ酸の立体的な嵩高さに起因することの実験的な証明を得た。例えば、Tyr420TrpはB環が舟型へ変化した生成物を与えた(Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002)。 以上、本研究をとうして基質特異性や環化フォールデングについて重要な知見を得ることができた。
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