研究概要 |
GABAレセプターアンタゴニスト結合部位にAla→Ser点変異を持つイエバエ(Musca domestica L.)OCR系統(以下OCRと略す)を用いて実験を行った.最初に,50%致死薬量(LD_<50>)を感受性イエバエと比較したところ,OCRは古典的塩素系殺虫剤ディルドリン(GABAアンタゴニスト)に対して約2000倍,新規GABAアンタゴニスト殺虫剤フィプロニルに対して約30倍の抵抗性を示すことが分かった.GABAレセプターアンタゴニスト結合部位へのリガンドの親和性を測定するためのプローブ[^3H]EBOBの結合特性を解析したところ,感受性系統ではB_<max>=360fmol/200μgタンパク質,K_d=6.9,nMであったのに対して,OCRではB_<max>=490fmo1/200μgタンパク質,K_d=29nMとなり,OCRでは結合部位の量的変化より,質的変化(EBOB親和性の4倍低下)が起こっていると考えられた.ヒル係数は,OCRと感受性系統でそれぞれ0.92と0.97であり,EBOBは,協同性のない単一の結合部位に結合すると推察された.次に,ディルドリンとフィプロニルがレセプターにどのように結合するかを調べるために,[^3H]EBOBをリガンドとしたレセプターアッセイを行った.その結果,ディルドリンのOCRにおける50%阻害濃度(IC_<50>)は1.4μMであり,感受性系統における31nMに比べて,OCRでは約45倍の活性低下が観察された.また,フィプロニルのIC_<50>値は,OCRでは5.5nM,感受性系統では2.8nMであり,OCRは約2倍の活性低下しか生じなかった.さらに,フィプロニルに構造が似たトリアゾールと二環式リン酸エステルの類縁体数種を合成して,GABAレセプターにおける活性を測定したが,ほとんどの化合物がOCRでは低活性であった.(795字)
|