研究概要 |
平成13年度の研究で,脈翅目ウスバカゲロウ科昆虫に属するクロコウスバカゲロウ幼虫から,殺虫性蛋白質を産生する微生物としてBacillus cereusを単離した.本菌は殺虫活性を示すPhospholipase C(PLC)を分泌することが知られている.そこで,クロコウスバカゲロウの唾液にPLCが含まれているかどうか調べた結果,鳥取市東部沿岸地域で採集したクロコウスバカゲロウ幼虫のうち約3割程度の幼虫の唾液からPLCが検出された.このことから,本菌は場合により幼虫と共存し,唾液の殺虫活性の向上に寄与するものと考えられた.幼虫から単離したB. cereusを振とう培養し,注射法で殺虫活性を示し,PLCとは異なる蛋白質を培養液から精製した.その結果,培養液には分子量約70Kの蛋白質(Toxin 1,昨年度の報告書に記載)に加えて分子量約35Kの蛋白質(Toxin 2)が単離された.蛋白質のN末端アミノ酸配列分析から,Toxin 1はzinc methalloprotease inhA2,Toxin 2はsphingomyelinase Cであることが示唆された.2種の殺虫性蛋白質をコードする遺伝子をB. cereusからクローニングし,それらの塩基配列を解読した結果,DNAの塩基配列から推定されるToxin 1およびToxin 2のN末端のアミノ酸配列は,精製した蛋白質のN末端アミノ酸配列と完全に一致した.以上のような研究を進める一方,殺虫性蛋白質の試験系の一つとして,ネオニコチノイド系殺虫剤に高い感受性を示すニコチン性アセチルコリン受容体も構築した.哺乳動物のnAChRとは異なり,これまで誰も昆虫のnAChRの効果的な発現に成功していない.そこで,α7nAChRのloop D領域を一部改変し,ネオニコチノイドと強く相互作用する擬似昆虫型受容体を構築することに成功した.
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