研究概要 |
すべてのビタミンK(VK)同族体は、凝固因子やオステオカルシン等のGlaタンパク質生成の際の補因子として必須であるが、最近になってVK_2のうちのメナキノン-4(MK-4)は、種々の組織に存在して、Gla化以外にも重要な生理機能を果たしているものと推測されてきた。我々は、ラットとマウスのin vivo実験ならびにこれら動物と、ウシ・ニワトリの各臓器酵素系を使ったin vitroのMK-4生成実験の両方を行うことによって、VK同族体からMK-4への変換生成機構の概要を明らかにしてきた。しかし、各組織におけるMK-4変換生成の生理的意義を含めたMK-4機能の本質は、依然として不明のままである。たまたま我々は、VKの新規作用を検索しているうちに、VK類がin vivoに炎症反応を抑制する可能性を示した。そして、今回、VKの炎症反応に及ぼす影響について、脾細胞を用いてin vitroにさらに詳細に検討したところ、MK-4が破骨細胞性の骨吸収サイトカインであるIL6の発現を抑制していることをつきとめた。 Wistar系ラットをVK添加飼料(VK_1を75mg/kg飼料含む)およびコントロール飼料(VK_1を0.75mg/kg飼料含む)で10日間飼育し、リポポリサッカライド(LPS,0.5mg/kg体重)を腹腔内投与した。投与18時間後に解剖し、血漿中のGOT・GPT活性を測定したところ、コントロール飼料群に比べてVK添加飼料群では有意に低下していた。また、肝臓中のIL-6mRNA量も同様に低下する傾向にあった。次に、マウス脾臓より初代培養細胞を調製して、in vitroでの検討を行った。培地中にLPSおよびK_1、MK-4を加えて培養し、細胞からRNAを調製した。IL-6発現量を比較したところ、コントロールに比べてVK_2(MK-4)を添加した場合に有意に低下していることが明らかとなった。
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