研究概要 |
α-amino-β-carboxymuconate-ε-semialdehyde decarboxylase(ACMSDと略す)はトリプトファンからナイアシンへの転換を支配する鍵酵素であるが、近年新たな働きが期待されるようになってきた。その理由としてキノリン酸やピコリン酸などトリプトファン代謝中間産物の生理機能が明らかにされ、それらの生成にACMSDが大きく関与している可能性があるためである。本年度は、ACMSDの組織特異的な局在部位および免疫系への関与を検討した。1)ACMSDの局在部位の検討:ACMSDは肝臓と腎臓に活性がみられるがその測定法の感度の低さより他の組織での発現が明らかではない。特に中枢神経系で神経毒として働くキノリン酸との関係において、ACMSDの脳での発現の有無は重要である。そこでRT-PCR法でACMSDmRNAの組織(全脳、胸腺、肺、脾臓、心臓、膵臓、肝臓、腎臓、副腎、精巣、脂肪組織、骨格筋)での発現を調べたところ、正常ラットでは肝臓と腎臓にのみ発現し他の組織には発現していないことが明らかとなった。2)免疫への関与2-1)in vivo:ACMSDの免疫への関与を調べるため四塩化炭素をラットに注射し、生体内のマクロファージを活性化させた。そして全組織のACMSD活性を測定したところ四塩化炭素単回投与の場合はACMSD活性に影響を与えなかったが、1-2ケ月の長期投与の場合肝臓ACMSD活性は有意に上昇した。2-2)in vitro:免疫細胞であるヒト前骨髄性白血病細胞HL-60およびそれを薬剤により単球に分化させたものからTotal RNAを抽出し、RT-PCR法を行ったところACMSDのmRNAは検出されなかった。マクロファージに分化させたものに関しては研究続行中である。本研究結果の一部は、Biochem.J.361,567-75(2002)に掲載。
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