α-amino-β-carboxymuconate-ε-semialdehyde decarboxylase(ACMSDと略す)は、トリプトファンからナイアシンへの転換率を支配する鍵酵素である。近年トリプトファン中間代謝産物であるキノリン酸、ピコリン酸の様々な生理機能が明らかにされ、その生成量に大きな影響を与えると思われるACMSDの新たな働きが期待されるようになってきた。昨年度はACMSDの組織特異的な局在部位の検討、免疫系への関与を検討した。本年度はACMSDの脳での働き、キノリン酸との関係を検討した。1)ラットの腹腔内にガラクトサミンとリポポリサッカライドを同時投与したが、24時間後に脳内にACMSDは検出されなかった。次にマウスにストレプトゾトシンを注射し、糖尿病にした。コントロールに比し脳内のACMSDmRNAの発現量は有意に増加した。2)食餌成分がラットのACMSDmRNAの発現、キノリン酸量に影響を与えるか検討した。カゼイン含量を増加させると肝臓ACMSDmRNAは有意に増加した。リノール酸含量を増加させると肝臓ACMSDmRNAは有意に減少し、血清キノリン酸量は有意に増加した。以上の結果から食餌条件、糖尿病などによりACMSDを介してキノリン酸の生成量が変動することが示唆された。
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