ピコリン酸はトリプトファン・ナイアシン代謝経路の中間代謝産物であり、in vitroの研究では、アポトーシスの誘発、マクロファージ炎症タンパク質の誘導など炎症や免疫系への関与が報告されている。しかしin vivoの実験における生体内での生理的役割に関しては不明である。これは生体成分中のピコリン酸量を測定する方法がないことに起因する。一方、α-amino-β-carboxymuconate-ε-semialdehyde decarboxylase (ACMSD)はトリプトファン・ナイアシン代謝の鍵酵素といわれ、栄養条件やホルモンにより活性が変動することが知られている。ACMSDはピコリン酸、キノリン酸、ナイアシン生合成の分岐点に存在し、ピコリン酸の生合成に関わっている可能性がある。本年度は炎症・免疫系とピコリン酸とACMSDの関係についてin vivoで検討することを目的とした。そして、以下のことを明らかにした。1)Dazziらの方法を改良し、ピコリン酸の定量法を確立した。ラットにおけるピコリン酸の血中濃度を明らかにした。2)ラットにACMSD阻害剤を投与しACMSDのピコリン酸生成への関与を検討した。その結果、ACMSD活性がピコリン酸の生成に影響を及ぼすことを明らかにした。3)ラットにLPSなどで短時間の免疫刺激を与えたがACMSD活性とmRNAは変化しなかった。以上より短時間の免疫刺激ではACMSDは変動しないことが示された。4)ACMSDはホルモンや食餌の条件で活性が変動するので、脂肪添加食と無脂肪食でピコリン酸の生成を検討した。その結果、有意な差はみられなかった。
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