アミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSD)は、トリプトファン・ナイアシン代謝経路の鍵酵素である。本研究ではACMSDの脳での発現、生体防御系への関わりを明らかにすることを目的とした。正常ラットの各臓器(胸腺、脳、肺、心臓、膵臓、肝臓、腎臓、副腎、脾臓、精巣、大腿四頭筋)におけるACMSDのmRNAの発現を調べたが、肝臓と腎臓以外での発現は認められなかった。次にACMSDと免疫系との関係を検討するためガラクトサミン+リポポリサッカライド(LPS)、四塩化炭素溶液、LPSの腹腔あるいは尾静脈注射を行い、各組織のACMSDの活性とmRNAの発現を検討した。短時間の免疫刺激はACMSD活性に影響を与えなかった。一方、免疫系細胞ヒト前骨髄球性白血病細胞HL60をTPAなどで分化誘導させACMSDmRNAの発現を検討したがACMSDmRNAは検出されなかった。ピコリン酸は炎症や免疫系への関与が報告されているが生体内での生理的役割に関しては不明である。ラットにACMSDの阻害剤を投与しACMSDのピコリン酸生成への関与を検討した結果、ACMSD活性とピコリン酸の生成量には正の相関関係があることが示唆された。キノリン酸は中枢神経系に大量に存在すると神経毒として作用することが知られている。そこで肝臓ACMSD活性に影響を与えるリノール酸をラットに投与しキノリン酸濃度に及ぼす影響を検討した。その結果、リノール酸食摂取により肝臓ACMSD活性は有意に低下し、活性に応じて血清キノリン酸量は有意に増加し肝臓ACMSD活性がキノリン酸濃度に影響を及ぼすことを明らかにした。
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