タンパク質中の酸化シスチンモデルについて、酸化シスチン部のみを有するタンパク質の調製を目的として合成を行った。まず、金属-アスコルビン酸系または、金属-過酸化水素系によるフェントン反応を用いたところ、インシュリン自身の重合化と断片化が12時間で約半分以上進行してしまい、酸化シスチン部を有しただけのインシュリンは調製できなかった。ただ、希薄過酸化水素水とインシュリンを低温で反応させると、重合化や断片化を伴わない酸化インシュリンが調製できることを発見した。現在、LC-ESI-MS等の機器分析とアミノ酸分析を実行中で、その構造変化と部位を特定する予定である。同時に酸化力の強い過酢酸でもインシュリン酸化を行ったところ、常温では断片化が激しく進んでしまった。5℃という低温での短時間処理にて、過酸化水素同様の酸化インシュリンを調製できる可能性が示された。同じく、機器分析とアミノ酸分析を実行中である。次年度はグルタチオン(GSH)との反応性、ラット褐色脂肪細胞に対する酸化インシュリンの作用を検討する予定である。 ジチオラン構造を有した酸化シスチンのモデル化合物を合成し、SH化合物(GSHなど)との活性酸素生成系を利用し、各種食用植物抽出物の抗酸化活性評価を系統的に開始した(一部抽出物に抑制活性の強いものを認めた)。また、今回の大きな成果としては、生のネギ属植物の酢酸エチル抽出物には酸化を促進する傾向が強く、加熱処理したネギ属植物には抑制の傾向が認められた。ネギ属植物に多く含まれる含硫成分の組成の違いが、このような効果の相違をもたらしているのかもしれないと考え、現在、促進、抑制双方の原因物質を同定中である。
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