1)酸化シスチン生成に関与する生体内酸化因子の特定:活性酸素種の中で酸化修飾タンパク質からの酸化シスチン生成量が最大であったものは、フェントン反応系(銅イオン+過酸化水素)によるヒドロキシラジカルであった。しかし、特定の疾病を除き銅イオンが生体内に多く存在することはないと考え、金属イオン非存在下における反応系にて酸化シスチン生成量を再検討した。その結果、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)が最も効率良く酸化シスチンの生成を引き起こした。同じ過酸化物である過酸化水素よりも約5倍の選択性で酸化シスチンと酸化メチオニン(メチオニンスルホキシド)が生じた。故に、LOOHは含硫アミノ酸残基に選択的な生体内酸化因子であると考えられた。 2)酸化シスチン含有タンパク質による生体成分の酸化障害:アミノ酸分析により酸化シスチンと酸化メチオニンを含有するインシュリン、ウシ血清アルブミンとヒト血清タンパク質を調製した。どの酸化タンパク質においても、単独では変化がなかったのに対し、グルタチオンなどのチオール存在下で各酸化タンパク質は断片化し活性酸素の生成が認められた。酸化含硫アミノ酸残基は、局所的な活性酸素の生成に関与する能動的な酸化ストレスマーカーであると示唆された。 3)ワサビイソチオシアネートによる細胞内酸化ストレスと第二相解毒酵素誘導:細胞内グルタチオンとの反応から活性酸素生成を引き起こす食品因子の探索を行った。ネギ属野菜類とアブラナ科野菜に強い細胞酸化ストレス能を認めた。特にワサビイソチオシアネート(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)による細胞内活性酸素生成量は大きく、ラット肝由来RL34細胞では高濃度で細胞死が、極低濃度では第二相解毒酵素誘導が起こった。ニンニクの含硫化合物についても同様の結果が得られている。
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