初年度は、脂質過酸化反応由来の内因性親電子活性種であり、様々な生理機能が明らかにされている2-アルケナール類について、タンパク質の化学修飾機構を詳細に解析するとともに、低分子アミノ酸誘導体を用いたモデル実験を構築し、2-アルケナール修飾アミノ酸の詳細な化学構造解析を行った。毒性および変異原性などが知られるアクロレインおよびクロトンアルデヒドとタンパク質(血清アルブミン)との反応を中性条件下(pH7.2)37℃でい、アミノ酸自動分析により、リジンを主な標的とする化学修飾反応を予想した。そこで、アクロレインあるいはクロトンアルデヒドとリジン誘導体(N-アセチルリジン)との反応を行い、フォトダイオードアレイUV-VIS検出器を備えた高速液体クロマトグラフィなどを用い、生成部(修飾アミノ酸)を単離した。アルデヒド-アミノ酸付加体について、600MHz核磁気共鳴装置(NMR)(現有設備)および高速液体クロマトグラフィー-質量分析装置(LC-MS)(現有設備)などを用いた化学構造解析を行い、これまでにピリジニウム環をもつ新規リジン修飾体を同定した。現在、キャリアタンパク質としてkeyhole limpet hemocyaninを用い、構造が明らかになったピリジニウム環型リジン付加体を認識する特異的モノクローナル抗体の作製を行っている。また、NMRを用いた微細な立体化学構造解析についても同時に進めており、これまでに光学異性体の存在をNOE測定などのNMR技術を駆使して明らかにしてきている。
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