研究概要 |
味細胞は、味情報を神経伝達物質によって味神経に伝えている。神経伝達物質放出のための細胞内カルシウムの増加は基底膜上の膜電位依存性や環状ヌクレオチド(cNMP)依存性チャネルを通る細胞外からの流入と、イノシトール1,4,5-トリスホスフェート(IP_3)依存性のカルシウムチャネルによる細胞内ストアーからの動因が考えられている。受容体が関与していると考えられる苦味・うま味・甘味のうち甘味は苦味と類似情報伝達機構をもつということから甘味と苦味を同じカテゴリーとし、本研究では特に、苦味とうま味に関して、マウスの味細胞を用いパッチクランプ法で以下の事を行った。 苦味-デナトニウム応答はcAMPとIP_3両方によって応答が伝達されていることがわかっている。そこで、GDP-βsを細胞内に導入し、応答への影響を調べた。その結果、半数の細胞で応答の減少・消失が見られたが、残りの細胞では応答に影響がなかった。そこでホスホリパーゼCの阻害剤や8-Br-cAMPを細胞内に導入したり、細胞内カルシウムストアのカルシウムを枯渇させると、応答は消失した。よってGタンパク質を介さない情報伝達系がcAMP系やIP_3系とクロストークしている可能性が考えられた。 うま味-相乗効果を示すグルタミン酸アゴニストをまず選出した。NMDAやカイニン酸は核酸による相乗効果を示さなかった。これに対し、trans-ACPD、L-AP4は核酸共存下において相乗効果を示した。このことからうま味受容体はmGluR4とは異なった本研究で示した電気生理学的特徴を持つ新規なタイプの代謝型グルタミン酸受容体であり、IMPとの相互作用部位を備えたものであると考えられる。
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