人乳にはリゾチームとα-ラクトアルブミンが存在し、その立体構造はよく似ているおり、両者は協力して生体防御に関っている可能性が考えられる。しかし、リゾチームとα-ラクトアルブミンのホモおよびヘテロダイマー化が病原菌の消化管上皮細胞への接着に及ぼす影響はまだ行われていない。また、α-ラクトアルブミンの2価陽イオン結合が病原性細菌に対する防御に貢献しているのかは明らかでない。そこで、本研究ではこれらの問題解決のため遺伝子工学的手法で、Ca^<2+>結合部位を欠損させたα-ラクトアルブミン変異体、酵素活性を持たないリゾチーム変異体、およびこれらの2量体を酵母pYES2やプロバイオティック効果のある乳酸菌で発現させて調製し、それらの抗菌性を調べる。本年度は、まず牛乳および人乳の上皮細胞の培養系を確立し、α-ラクトアルブミンのmRNAを分離し、RT-PCRによりcDNAを作成し、バクテリオファージM13MP19プラスミドとpT7Blueベクターヘクローニングした。また、リゾチームのcDNAの部位指定突然変異により、融合部位を作成した。今後、リゾチームおよびα-ラクトアルブミンのcDNAから、リゾチーム-リゾチームおよびα-ラクトアルブミン-α-ラクトアルブミンのホモダイマー、リゾチーム-α-ラクトアルブミンのヘテロダイマーのcDNAクローニングする。
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