リゾチームおよびα-ラクトアルブミンの抗菌戦略

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13660129
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: IBRAHIM H.R 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (90274836)
• キーワード: リゾチーム / α-ラクトアルブミン / 抗菌性 / ホモダイマー / ヘテロダイマー / カルシウム結合 / 乳腺細胞 / 新薬開発

研究概要

人乳にはリゾチーム(Lz)とα-ラクトアルブミン(α-LA)が存在し、その立体構造はよく似ており、両者は協力して生体防御に関ってる可能性が考えられる。しかし、Lzとα-LAのホモおよびヘテロダイマー化が病原菌の消化管上皮細胞への接着に及ぼす影響はまだ明らかにされていない。そこで、本研究では遺伝子工学的手法で、変異タンパク質を調製しこれらの問題解決を試みた。本年度は、乳腺の癌細胞(HMEC : Human Mammalian Epithelial Cell)を培養し、細胞が増殖したところに、プロラクチンを様々な方法で与えた。しかし、何れの状況においても、人α-LAの発現は確認できなかった。次に、人乳から直接Totol mRNAを採取する方法を試み、この方法より、人α-LAと人Lzの発現を確認した。乳タンパクの発現を確認後、同じTotal mRNAより人α-LAと人LzのcDNAをRT-PCR法により合成することに成功した。そして、抽出された人α-LAと人リゾチームのcDNAをpT-7Blue vectorにクローンし、大腸菌による遺伝子スクリー=ングにかけたところ、人α-LAと人リゾチームが組み込まれているベクターはあった。そこで、今回、クローニングが成功したと思われる二つの人cDNA両方を電気泳動およびBig Dye Terminater法によるDNA Sequencingを行ったところ、人α-LAと人LzのcDNAが正常に遺伝子を組み込まれていることを確認した。そして、人α-LAの塩基配列中に、SacIサイトをmutagenesisによって取り除いた。今後は、人Lzと人α-LA、およびこれらのホモおよびヘテロダイマーを酵母の発現ベクターpMETaBベクターを使って酵母のPichia methanolica PMAD16で発現させて調製し、それらの抗菌活性、Ca^<2+>、Zn^<2+>結合性、GalTose活性、酵素活性、細菌細胞壁成分LPSとの相互作用を調べる予定である。

研究成果

• [文献書誌] H.R.IBRAHIM, T.Matsuzaki, T.Aoki: "Genetic evidence that antibacterial activity of lysozyme is independent of its catalytic function"FEBS Letters. 506. 27-32 (2001)
• [文献書誌] H.R.IBRAHIM, U.Thomas, A.Pellegrini: "A helix-loop-helix peptide at the upper lip of the active site cleft of lysozyme confers potent antimicrobial activity with membrane permeabilization action"Journal of Biological Chemistry. 276(47). 43767-43774 (2001)
• [文献書誌] H.R.IBRAHIM, T.Aoki, A.Pellegrini: "Strategies for New Antimicrobial Proteins and Peptides : Lysozyme and Aprotinin as Model Molecules"Current Pharmaceutical Design. 8(9). 671-693 (2002)
• [文献書誌] H.R.IBRAHIM, T.Aoki: "New Promises of Lysozyme as Immune Modulator and Antimicrobial Agent for Nutraceuticals"Journal of Foods & Food Ingredients. (In Press).