平成15年度は本研究の最後の年であり、アントシアニンによる癌細胞のアポトーシス誘導能およびその分子機構について解析した。アントシアニンはヒト前骨髄白血病細胞(HL-60)のアポトーシスを誘導し、その誘導活性は基本骨格であるアクリコンの化学構造と深く関係している。分子機構を解析した結果、アントシアニンはHL-60細胞に活性酸素を産生させ、ストレスシグナル伝達経路JNKを活性化させた。それによって、アポトーシス実行系である蛋白質分解酵素カスパーゼ類が活性化され、DNA断片化を引き起こした。一方、抗酸化剤NACやカタラーゼはアントシアニンによる活性酸素の産生、JNKおよびカスパーゼ類の活性化、DNAの断片化などを阻止した。これらの結果、アントシアニンが活性酸素-JNKパスウェイを通してHL60細胞のアポトーシスを引き起こしたことが明らかとなった。その研究成果は<国際腫瘍誌>や<発癌>などの国際癌専門学術雑誌に発表した。また、本研究課題の研究成果によって二つの国際会議(第8回腫瘍学進展世界大会および第6分子医学国際シンポジウム(2003年10月、ギリシア)、第3回国際アントシアニンワークショップ(2004年1月、オーストラリア)の招待講演を受けた。研究代表者はそれぞれの国際会議で研究成果を発表し、世界に本研究課題の研究成果を発信することができた。
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