研究概要 |
分離大豆タンパク質を或種の微生物由来セリンプロテアーゼで処理した後に残る不溶性高分子画分(high-molecular-weight fraction,以下HMF)には強い胆汁酸捕捉能があり、高い糞中胆汁酸排泄を介して血清コレステロール値低下と共に実験的肝臓癌大腸癌抑制作用を発揮する。このような作用をもたらすHMF中の機能性因子は、消化を免れて腸管内を移動する難消化性タンパク質(resistant protein,以下RP)に帰結できる。先に人工消化によって調製したRPを直接投与して、糞中胆汁酸排泄が増加することを実証しRPの長期投与による実験的発癌抑制の検証に取組んでいる。これに併行してRPに捕捉される胆汁酸の構造特異性について再検討を加えた。 各種胆汁酸捕捉能は平衡透析法によって比較[^<14>C]CDCA捕捉に対するDCAやCAの阻害効果はScatchard plotによって求めた。RPによって捕捉される胆汁酸は、その親和性の順にLC, DCA, CDCA>>HDCA>TDCA, GCDCA>UDCA>CAとなり、とくにCA系列では一次胆汁酸やそのアミノ抱合体より二次胆汁酸の捕捉能が強くScatchard plotにおいても[^<14>C]CDCAの捕捉は大過剰のCA存在下でも阻害されなかったのに対しDCA共存下では不拮抗の様式によって強い阻害をうけることが明らかとなった。生体において二次胆汁酸が発癌プロモーターとして最も危険な存在であることを考えれば、発癌抑制のため食物繊維量のRPを持続的に摂取することは理に適っている。 DCA, deoxycholic acid ; CDCA, chenodeoxycholic acid ; LC, lithocholic acid, CA, cholic acid ; HDCA, hyodeoxycholic acid ; TDCA, taurodeoxycholic acid ; GCDCA, glycochenodeoxycholic acid ; UDCA, ursodeoxycholic acid.
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