研究概要 |
(1)生体内レチノールの代謝制御機構の解明を目的として、生体内レチノイド濃度の変動に応じた酸化酵素群の発現制御機構の解析を行った。その結果、ビタミンA欠乏ラットでは、通常飼育した状態と比較すると肺では酸化酵素遺伝子群の発現量の差がなかったのに対して、肝臓では、RoDH4、RalDH1、脳では、RoDH4、RalDH2のmRNAレベルが低下していた。一方、ビタミンA欠乏ラットへのレチノイドを投与した場合には、肝臓や脳では酸化酵素遺伝子群の発現に顕著な変化が見られなかったのに対し、肺ではRoDH4、RalDH1のmRNA量が減少した。以上の結果から、生体内レチノイド濃度の変動に対応して、各組織毎にレチノイド酸化酵素群の発現調節が行われていることが明らかとなった。しかも、欠乏による長期的なレチノイド濃度変化、あるいは、レチノイド投与による短期的なレチノイド濃度変化に対して、酵素遺伝子群の発現量は同一の組織内でも異なった反応を示すことが明らかとなった。 (2)生体内におけるレチノイド情報伝達系の新規機能を明らかにする目的で、マウスにレチノイン酸を投与した後のマウス行動学的解析を行った。情動状態を測る指標となるopen field test、elevated zero maze test、及び,他のマウスに対する優勢度を測るsocial dominance tube taskなどの解析を行った結果,レチノイン酸及びエストロゲン受容体のアゴニスト投与によりマウスの不安行動が増加し,相手マウスに対する攻撃性が上昇することが明らかとなった。また,情動行動制御遺伝子群の脂溶性リガンド投与後の発現レベルの変化を追跡し、レチノイン酸投与により、セロトニントランスポーターなど複数の遺伝子の発現レベルが変化することが明らかとなった。
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