研究概要 |
ガーリック(Allium sativum L.)は抗菌作用、抗血小板作用などの多彩な薬理作用を有することが知られている。米国でスタートしたデザイナーフーズプロジェクトでは、がん予防効果の可能性のある食品40種類を挙げているが、その中でガーリックは、がん予防効果が最も高い食品として取り上げられており、デザイナーフーズの素材として最も注目されている食品の一つである。本研究は、ガーリックの強力な抗がん作用に着目し、新しい視点からネギ属植物の機能評価を行うことを目的としている。本年度はガーリックの抗がん作用を担うと考えられるallyl sulfideの合成法を確立するとともにその抗がん作用について検討した。 Diallyl sulfide(DAS),diallyl disulfide(DADS)は3社から標品が市販されているものの純度に問題がある。また、diallyl trisulfide(DATS)などtrisulfideやtetrasulfideについては合成や精製が困難であることから研究は遅れている。本研究では高温有機溶媒中で硫黄、硫化ナトリウムを反応させて合成した多硫化物によう化メチル、臭化アリルを作用させて置換反応することにより効率よく各種スルフィド類を合成する方法を確立した。さらに詳細な減圧蒸留の条件検討を行い、DADS、DATSに富む画分を得て、高速液体クロマトグラフによる精製法を確立し純度97%以上のDATSを調製することに成功した。ヒト大腸がん細胞(HCT-15)を用いてこれらのsulfideの抗がん作用をin vitroで検討したところ、DASはHCT-15細胞の増殖にほとんど影響を及ぼさなかったが、DATSとDADSは増殖を抑制し、特にDATSは顕著に増殖を抑制した。さらに、DATSはHCT-15細胞のCaspase-3,-8の活性の増加、ミトコンドリア膜電位の低下とともにapoptosisを誘導した。一方、タマネギ由来のdipropyl disulfides(DPDS)はHCT-15細胞にはほとんど影響を及ぼさなかったことからallyl基を有するdi-もしくはtri-sulfideが抗がん作用を有することが明らかになった。これらの抗がんsulfideの作用機構についてさらに検討中である。
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