研究概要 |
これまでの疫学研究によりガーリックの積極的な摂取は、がんを予防する可能性が示唆されている。本研究課題では、ガーリックに含まれるアリルスルフィドに着目し、その構造と抗がん作用について基礎的な検討を行い、ガーリックのがん予防食品としての特徴や機能について明らかにすることを目的とした。ガーリック由来のスルフィドとして、アリル基やメチル基を結合したモノスルフィド、ジスルフィド、トリスルフィドが主要なものである。これらのスルフィドのうち標品が市販されていないトリスルフィドの合成法を確立しヒト大腸がん細胞株HCT-15を用いて構造活性相関について検討した。ジアリルモノスルフィド(DAS)やジアリルジスルフィド(DADS)はHCT-15の増殖をほとんど抑制しなかったが、ジアリルトリスルフィド(DATS)は顕著に細胞増殖を抑制した。DATSは微小管の重合を抑制し、細胞周期をM期で停止させること、カスパーゼ3を活性化してアポトーシスを誘導することが明らかとなった。また、異なる側鎖を導入したトリスルフィドを合成して細胞増殖抑制活性を測定したところメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基の順で炭素鎖長に比例して増殖抑制活性は増加したがブチル基を導入したジブチルトリスルフィドの増殖抑制活性は減少した。 さらにこれらのスルフィドが発がんに及ぼす影響を検討する目的で、肝臓の薬物代謝系酵素の活性に及ぼす影響についてラットを用いて検討した。DAS,DADSは第I相、第II相酵素の活性にほとんど影響を及ぼさなかったがDATSはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キノンレダクターゼ(QR)の活性を有意に増加させた。さらに、DATSは四塩化炭素投与による急性肝障害を低減させたことから、DATSによるGSTやQRの誘導がラジカル分子によるストレスから生体を防御することが明らかになった。
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