研究概要 |
前年度までに天然クマリン化合物であるエスクレチンおよびその配糖体であるエスクリンが化学発癌剤N-ニトロソビス(2-オキソプロピル)アミン(BOP)あるいは1,2-ジメチルヒドラジシ(DMH)の単回投与によって標的臓器中に生成する酸化傷害を抑制するほか、短期発癌モデル実験系(BOPはハムスター膵癌・DMHはラット大腸癌)においてもエスクリンが前癌病変や腫瘍形成を抑制することを見出した。今年度は培養細胞を用いてエスクレチンおよびニスクリンの細胞への取り込みを調べた。ヒト臍帯静脈内皮細胞の培地にエスクレチンあるいはエスクリンを50μM濃度に添加して24時間培養すると、培地中にはそれぞれ約80%と60%が残存していた。エスクリンの場合には、培養2時間後には培地中にエスクレチンの存在が確認され、24時間後には4.4μM濃度に達した。エスクレチン、エスクリンの細胞への取り込みは、多数の細胞を得るのが容易なヒト胎児由来線維芽細胞を用いて調べた。50μM濃度のエスクレチンあるいはエスクリンで24時間培養すると、エスクレチンの場合は細胞10^7個あたり4.0pmolのエスクレチンが、エスクリンの場合は2.2pmolのエスクレチンが検出され、エスクリンは検出されなかった。これらの結果より配糖体であるエスクリンはエスクレチンに変換されて細胞に取り込まれるか、あるいは取り込まれて速やかにエスクレチンに変換されて抗酸化活性を発揮していることが示唆された。さらに、エスクレチンあるいはその配糖体エスクリンやチコリインを含むとされるセイヨウタンポポや西洋野菜チコリーの乾燥根から有機溶媒(酢酸エチル/塩化メチレン/ブタノール/メタノール)で分画抽出して各画分を分析したが、それらはほとんど確認できなかった。今後、新鮮なチコリーの芽、葉、根について検討を加える。
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