研究概要 |
1.分光反射率測定とNDVIによる植生評価:植生解析にはNDVIが常用される。今回、NDVIの根拠であるレットエッジの性能を評価すべく連続分光スペクトル測定を波長の変数として微分をした。レッドエッジで大きなピークが観測され、このピークが植物(ここではキャベツ)へのストレスで短波長側にシフトし、従って植物へのストレスがレットエッジとNDVIに反映される事を確認した。しかし、このスペクトル微分では約0.5μmでもピーク値があり、同ストレスに対するこのピーク値の変化はさらに高感度であり、よって、この波長でのNDVIの定義の方が有効である事を見出した。 2.分光偏光度特性による植生状態の評価、およびNDVIとの関係:植物(キャベツ)へのストレスに対するNDVIと分光偏光度の計測感度の比較を行った。因子分析により663,1450nmを選択し、これら2波長での分光偏光度特性とNDVIとのストレス負荷後の反応比較では、NDVIでは19日後、1450nmの分光偏光度では10日後、663nmの分光偏光度では7日後に一定の変化が現れた。すなわち、NDVIに比べて分光偏光度は日数で約3倍、感度が良い事が分かった。 3.分光偏光度画像計測とその植生活力度評価への応用:簡易CCDカメラに帯域フィルタと偏光フィルタをセットし、分光偏光度画像を撮影した。植物葉を点の計測と葉全体の偏光度画像をパターン計測するのとでは情報の質量に大差がある。キャベツやジキタリスにストレシを与えて分光偏光度画像を測定・解析した。これを普通のカラー画像と比較したが、ジキタリスの葉表面はちぢみ状態であり、偏光度画像がカラー画像に比して有用な情報を先行的に取得する事は出来なかった。一方、キャベツ葉では、Blue, Green, Red, Infrared間の葉全体のデータを使ったB,G,R,Iの組み合わせで相関係数を求め、これをストレス日数との関係で日変化を見ると、この挙動に大きな差異が確認できた。ストレスなしではB-G,R-Iの相関係数の日変化が類似し、別にB-I,G-I,B-Rが類似した。また、この2グループの日変化の挙動は逆傾向にある。しかし、各種ストレスが加わるにつれて、これらの関係や秩序が順次、乱れて錯綜する。すなわち、カラー画像では確認できない植物へのストレスを、偏光度画像の相関係数とその時間的挙動は捕らえていた。 4.植物の活力度測定とは(植物の活力度測定についての今までとこれから):従来のリモートセンシングによる植生計測・植生解析は原理的にはクロロフィル量の計量であり、人間で言えば「人口密度調査」である。これに対して植生の「健康度や活力度」計測・評価とは人間で言えば「健康診断、体力測定」に対応するもので、この視点からの測定法や解析法の見直しが必要である。
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