研究概要 |
(1)熱帯フトモモ科樹木のAl耐性種Melaleuca cajuputiと感受性種Melaleuca bracteataを用いて、根端のAlの集積、フェノール性物質、リグニン、カロースの量を調べた。根端のAl集積量は感受性種のM.baracteataの方が耐性種のM.cajuputiよりも多かった。クエン酸で集出されるAlの量は両種で差がないが、細胞壁と強く結合しているクエン酸で抽出されないAlの量はM.cajuputiで少なかった。フェノール性物質、リグニン、カロースの量はM.baracteataの方がM.cajuputiよりも多かった。これらの細胞壁構成物質が両種のAl耐性の違いに関連している可能性がある。(2)根圏の低酸素ストレスに耐性を持つMelaleuca cajuputiと感受性種のEucalyptus camaldulensisを用いて、根圏の低酸素ストレス下による光合成と糖の根への転流、糖転流に関わる酵素の活性の変化を調べた。感受性種のE.camaldulensisは、低酸素ストレスにより光合成が阻害され、さらに頂端や根などの成長器官に転流される光合成産物の割合が減少した。耐性種のM.cajuputiは低酸素濃度ストレスによって気孔コンダクタンスが低下したが、光合成には影響がなく、光合成産物の転流はストレスを受けた直後に影響は受けないが、長期間のストレスによって地上部に転流される光合成産物の割合が高くなった。(3)熱帯マメ科樹木4種(Acacia auriculiformis, A.mangium, Paraserianthes falcataria, leucaena leucocephala)のリン酸欠乏件下での根の高親和性リン酸トランスポーター、クエン酸合成酵素、分泌性酸性ホスファターゼの遺伝子の発現をリアルタイムPCR法により調べた。昨年度報告した結果と異なり、高親和性リン酸トランスポーター遺伝子の発現がリン酸欠乏によって誘導される種があったが、現在再現性を確認している。(4)タイ国ナラチワ県の酸性硫酸塩土壌、泥炭湿地、砂地の植栽試験地の樹木成長の計測と環境計測を行った。さらに酸性硫酸塩土壌では植栽する季節の影響を明らかにするための試験を行った。現在、これまでの結果を取りまとめているところである。
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