本研究では、熱帯酸性土壌に耐性のある樹木種を選抜し、アルミニウム過剰やリン酸欠乏等の酸性土壌で生じる個別のストレスについて、近縁の感受性種と比較しつつ耐性種の耐性機構を明らかにすることを目的とした。この研究のゴールは、耐性種の耐性機構をふまえてストレスを緩和する育苗・造林法を考案し、酸性硫酸塩土壌等の熱帯荒廃地への環境造林の手法を開発することである。タイ国ナラティワート県の酸性硫酸塩土壌の荒廃地での植栽試験により、環境造林の候補樹種がいくつか見出された。これらの樹種のなかには、強いアルミニウム耐性や湛水耐性を持つものがあった。これらの樹種の一部についてストレス耐性機構の一端を明らかにすることができた。マウンド造成によって植栽木の生残率を向上させることができた。しかし、その耐性機構はまだ完全には解明されておらず、今後もこれらの樹種を用いて、熱帯酸性土壌(特に酸性硫酸塩土壌)で生じるストレスへの樹木の耐性機構の解明と耐性機構をふまえたストレスを緩和する育苗・造林法の開発を続けていく必要がある。
|