本年度は、地上データの収集が進んでいる東京大学北海道演習林岩魚沢固定試験地を対象地として、2001年8月16日に撮影されたIKONOS画像および現地調査による地上データの比較を通じて、対象林分に生育する樹種についてのスペクトル特性について考察し、樹種判別の可能性について検討した。 岩魚沢固定試験地には50m四方のプロットが約80ヵ所設置してあり、毎木の直径および樹種等が記録されている。その中から8つのプロットを選択し、各プロットにおいて、樹木位置、樹高および樹冠測定を行い、樹冠投影図を作成した。IKONOSデータのマルチバンドはパンクロバンドに合わせてリサンプリングを行い、解像度を統一した。各樹冠につきDN値の統計量を計算し、どのバンドにおいて樹種による違いが明確に見られるかを検討した。差異の見られるバンドについては、まず針葉樹と広葉樹の2グループに分け、次に各グループ内の樹種間で、それぞれの反射強度分布に差が見られるかどうかを統計的手法により検定した。 スペクトル解析の結果、可視光領域ではほぼ同一であったが、近赤外領域バンドにおいて樹種グループ間の反射強度に比較的大きな違いが見られた。この結果、針広の区別は高い精度を持って行うことが出来ることがわかった。一方、各グループ内での分類は、針葉樹2種、広葉樹4種の反射スペクトルに差がわずかながら見られるが、種々の理由から樹種の違いを正確に反映したものかを判断することはできなかった。今後、樹種ごとのスペクトル分布特徴を把握することで、樹種判別の精度を向上させることができると考えられる。ただし、今回の撮影は8月に行われたもので、樹種による反射スペクトルの違いが少ない時期に当たってしまっていることから、詳細な樹種判別の可能性には疑問が残る。また、樹冠をとりだすセグメンテーション処理も必要であり、その手法の検討が必要である。
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