詳細な天然林の林相区分はこれまで空中写真では目視の限界、衛星データでは分解能の限界から困難とされてきたが、高解像度衛星データの利用によって簡易なものになることが期待される。一方、人工林においては空中写真および従来の衛星データでは行えなかった大面積での立木本数および樹冠粗密度の把握が期待される。そこで本年度は、テクスチャのセグメンテーション解析による天然林および人工林に対する主木本数と樹冠粗密度の把握手法の開発ならびに検討を行った。 天然林を対象としたテストサイトには、昨年度と同様に東京大学北海道演習林岩魚沢大型固定試験地内のプロット13ヶ所を利用した。人工林テストサイトは、中部森林管理局木曽森林管理署管内のヒノキ-ヒノキ人工二段林団地内に計15ヶ所設定してある成長試験地のうち、上松地域の成長試験地4ヶ所および南木曽・坂下地域の成長試験地3ヶ所の資料を用いた。衛星データには2002年6月7日に撮影された北海道富良野市周辺のQuickBird画像および2002年7月18日に撮影された長野県上松町周辺および2002年7月23日撮影の長野県南木曽町周辺のQuickBird画像を使用した。 天然林について、同一のパラメータで針葉樹・広葉樹別の林相区分を行った結果、天然林の針広混交率推定が可能であることが明らかになった。各樹種の反射特性が把握できたところで教師無し分類を行い、分類結果を用いたセグメンテーションを行うことが有効であると考えられる。 人工林については、樹冠、草地、影の分類は可能であった。しかし、単木樹冠を直接分割することはできなかった。また、分類を行っても隣接木と反射特性が類似しているために、単木識別は行えなかった。単木識別を行う際には、あらかじめ梢端等の単木要素の抽出を行った後、隣接するピクセルとの連続性などの関係から樹冠の把握を行ってゆく必要があると考えられる。
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