詳細な天然林の林相区分はこれまで空中写真では目視判読の限界、衛星データでは分解能の限界から困難とされてきたが、高解像度衛星データの利用によって簡易なものになることが期待される。本研究のテストサイトには、東京大学北海道演習林岩魚沢大型固定試験地内のプロット13ヶ所を利用した。衛星データには2001年8月16日撮影のIKONOS画像および2002年6月7日に撮影された北海道富良野市周辺のQuickBird画像を用いた。 初年度はIKONOS画像を用い、各樹冠のDN値統計量を計算し、どのバンドにおいて樹種による違いが明確に見られるかを検討した。差異の見られるバンドについては、まず針葉樹と広葉樹の2グループに分け、次に各グループ内の樹種間で、それぞれの反射強度分布に差が見られるかどうかを統計的手法により検定した。スペクトル解析の結果、可視光領域ではほぼ同一であったが、近赤外領域バンドにおいて樹種グループ間の反射強度に比較的大きな違いが見られた。この結果、針広の区別は高い精度を持って行うことが出来ることがわかった。一方、各グループ内での分類は、針葉樹2種、広葉樹4種の反射スペクトルに差がわずかながら見られるが、種々の理由から樹種の違いを正確に反映したものかを判断することはできなかった。 次年度はQuickBird画像を用いて、テクスチャのセグメンテーション解析による天然林に対する主木本数と樹冠粗密度の把握手法の開発ならびに検討を行った。針葉樹・広葉樹別の林相区分を行った結果、天然林の針広混交率推定が可能であることが明らかになった。また、セグメンテーションにより単木区分を行うのは難しいが、材価の高低別やいくつかの科をグルーピングしたレベルでの分類は可能であることがわかった。本研究により、大面積の針広混交天然林について、リモートセンシングによる林況把握が実現可能であることが明らかになった。
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