研究概要 |
渓畔域における流路堆積地の変遷と林分構造について把握するため,渓畔林の林分構造の概査と予備的な空中写真判読を行った。 調査地は大規模崩壊地大谷崩を有する安倍川上流大谷川の河口から48km地点〜50km地点までの1km区間を対象とした。解析に用いた空中写真は1964年,1975年,1984年,1994年に撮影された白黒写真と1999年に撮影されたカラー写真である。写真判読は周辺部の構造物や谷壁斜面に存在する非撹乱林地を基準に,高木林,低木林,裸地(流路)に分類し,2,500分の1の地形図に移写した。現地調査は,微地形を考慮して,各測線上に調査区を設置し,毎木調査を行った。また,61年〜99年の主な豪雨災害を調べた。 空中写真の判読によると,林地は増加傾向にあり,近年特に低木林の増加が著しい。これは99年に上流に床固工群が完成したため堆積地が安定し,撹乱を受けにくくなったためと推察された。低木林が75年,84年に増加していなかった理由として,74年,82年,83年の大きな豪雨災害による撹乱を受けたためと推測された。 微地形区分と堆積地の安定年数をみると,比高の高い箇所は撹乱を受けにくいため,地形面が安定していることがわかった。 出現樹種を一般に先駆性の高い樹種を先駆樹種,山腹に多数生育する樹種を遷移後期種とし,どちらにも分類し難い樹種を遷移中期種とした。また,群落名を初期,中期,後期群落とした。 初期群落は99年以降安定し植生が定着した堆積地上に存在し,樹種は先駆樹種が優占しており,稚樹は遷移中期種のシデ類が多かった。中期群落は75〜94年以降に安定した低位段丘上に存在し,高木はシデ類が優占しており,稚樹は遷移後期種のカエデ類が多数出現していた。後期群落は64年以前から,64年〜84年の間に安定した高位段丘,谷壁斜面に存在し,カエデ類が多数存在しており,植生も定着していることから大谷川渓畔林の安定した姿と推察された。
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