研究概要 |
下流で観測される濁度を指標として,山地河川の土砂動態をモニタリングする方法を確立するために,京都大学穂高砂防観測所の試験流域の足洗谷流域で,生産土砂や堆積土砂の粒径調査,洪水時の濁度観測,源頭部における土砂生産流出過程のビデオ観測,供給土砂の移動過程の調査,水の動態の調査を行い,水と土砂の動態の解析を行った.その結果,以下のような成果を得た. 1・濁水に含まれる濁度成分の粒径は0.2mm以下であり,それらの微細砂は生産土砂に5〜10%含まれている.また,濁度成分には有機物質が14〜22%含まれていた.生産土砂が渓流に供給された後,移動に伴って濁度成分が流出し,約1km流下すると濁度成分の存在割合はほとんど0になる. 2.調査流域では,土砂生産,土砂供給,土砂輸送が1年サイクルで完結しているので,下流端における濁度成分の負荷量,濁度成分に含まれる有機物の割合,土砂生産源の土砂の粒度分布から土砂生産源からの土砂供給量が推定できることが明らかになった. 3.調査流域では流水の伏流,洪水後半の湧水の発生などが水の動態として観測され,これが土砂移動や下流の濁度変化に影響を与えている.また,濁度変化は移動土砂に含まれる濁度成分の割合にも影響される.以上のことを総合的に考えることによって,濁度と流量のヒステリシスカーブから供給土砂が渓流のどの位置を流下しているのかを知ることができる. 4.前年度の結果と併せて,濁度を指標とした山地河川の土砂動態のモニタリング手法が有望であることが明らかにされた.
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