キノコの交配型と核相の違いが菌根共生の樹立に及ぼす影響を調べた。供試菌は4極性キノコのヒラタケから得た4種類の一核性菌糸とそれらから成る2種類の二核性菌糸を用いた。ランは無葉緑ランの一種タカツルランを用いた。各菌糸とタカツルラン種子との二者培養を行い、次のようなことが明らかになった。和合性のある一核性菌糸A1B1とA2B2との培養において、A1B1による種子の発芽率は44%で生長は中程度であったが、A2B2による発芽率は6%で極端に低くまた生長も悪かった。しかし、これらの菌糸から成る二核性菌糸A1B1×A2B2による発芽率は60%で、生長もA1B1によるものより格段に良かった。もう一組のA1B2とA2B1との培養においては、A1B2による発芽率は90%近くで生長も良好であったが、A2B1による発芽率は2%以下であった。しかも、これらの菌糸から成る二核性菌糸A1B2×A2B1により得られた結果はA1B2による結果より悪かった。以上の成果から次のようなことが示唆された。(1)A因子が発芽と生長を促進し、その能力はA1の方がA2よりはるかに高い。(2)B因子は発芽と生長を阻害し、その能力はB1のほうがB2よりはるかに高い。もしくは(2)B1因子のみが阻害的でB2因子はA因子の能力を助長する。(3)二核性菌糸A1B1×A2B2ではその構成核A1B1とA2B2は発芽と生長に対して促進的な相補作用を行うが、A1B2×A2B1では構成核A2B1はA1B2の効果を減ずる。 また、交配型が同一の2種類の1核性菌糸との二者培養で、種子の発芽率は44%と67%で、しかも生長にも差があった。この差は核に起因することを示唆している。 さらに、核組成は全く同じだが細胞質が異なる2種類の2核性菌糸との二者培養では発芽率は同じであったが生長に差があった。この結果は細胞質に起因することを示唆している。
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