研究概要 |
森林内の初期侵入性外生菌根菌の分散と定着の現象を解明するために,モデルとして,アンモニア菌を選択した.菌根性のアンモニア菌としてはHebeloma spoliatumアシナガヌメリ,Hebeloma vinosophyllumアカヒダワカフサタケ,Alnicola loctariolensアカヒダワカフサタケモドキなどが知られているが,千葉県での野外実験の実施を考慮し,千葉県で豊富に採取される,アシナガヌメリを材料に選択した.野外集団のコロニーを採集する野外実験区として千葉県内の,イヌシデ・コナラ林,アカガシ・スダジイ林の2ヵ所を選択し材料採取の準備をおこなった. また,アシナガヌメリのコロニー識別ならぴに集団構成を明らかにするため,複数の菌株ならびに標本を供試し,それらのITS領域の塩基配列を比較した.PCRプライマーはWhite et al.のITS4ならびにITS5を用い,遺伝子の増幅後,DNA断片をベクタープラスミドにクローニングし,塩基配列の決定を行った.その結果,本領域では供試菌間にあまり変異が認められず,本菌の集団解析を行うためにはより変異の大きな遺伝子領域を探索する必要性が明らかとなった.そこで,子嚢菌類でクローン識別に利用されているマイクロサテライトDNAの探索を試みた.マイクロサテライトDNA領域ならびにその近傍における変異の検出には(GA)8,(GAG)6,(CTT)6をプライマーとして用いたPCRを行い,増幅されたDNAバンドパターンの違いを調べた.(GA)8ならびに(CTT)6を用いPCRを行った場合,得られたDNAバンドパターンは供試菌間で異なっていた.現在,得られたPCR産物を用いて,ゲノミックライブラリーをスクリーニングし,マイクロサテライトDNA領域の塩基配列を明らかにすることを試みている.
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