研究概要 |
森林内の初期侵入性外生菌根菌・腐生菌の分散と定着の現象を解明するために,モデルとして,アンモニア菌を選択した.菌根性のアンモニア菌としてはHebeloma spoliatumアシナガヌメリ,腐生菌としてはザラミノヒトヨタケCoprinus phlyctidosporusを選択した.野外集団のコロニーを調査するために,野外実験区を東京大学千葉演習林(千葉県)のアカガシ・スダジイが混じるモミ林に,今年度10×1mの方形区を3箇所設け,4月から5月にかけて,尿素処理をおこない,その後に発生する子実体を,5月から12月にかけて,合計15回調査した.その結果3箇所の方形区から,それぞれ約500の子実体が得られ,アシナガヌメリ226菌株,ザラミノヒトヨタケ284菌株を分離した.また発生した子実体の位置は平面図にプロットした. 得られたアシナガヌメリのコロニー識別ならびに集団構成を明らかにするため,それらのITS領域の塩基配列を比較した.PCRプライマーはWhite et al.のITS4ならびにITS5を用い,遺伝子の増幅後,DNA断片をベクタープラスミドにクローニングし,塩基配列の決定を行った.その結果,本領域では供試菌間にあまり変異が認められず,本菌の集団解析を行うためにはより変異の大きな遺伝子領域を探索する必要性が明らかとなった.そこで,子嚢菌類でクローン識別に利用されているマイクロサテライトDNAの探索を試みた.現在,得られたPCR産物を用いて,ゲノミックライブラリーをスクリーニングし,マイクロサテライトDNA領域の塩基配列を明らかにすることを試みている.
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