研究概要 |
これまでの結果から、再生セルロースあるいはマーセル化セルロースを水に分散させ、触媒量のTEMPO(2, 2, 6, 6-テトラメチルピペリジニルー1-オキシラジカル)と臭化ナトリウムを添加し、pHを10-11にセットして次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより、常温で30分以内にセルロースが水に溶解し、その溶液をメタノール中に注入することにより、セルロース中のC6位の1級水酸基がすべてカルボキシル基に酸化された均一な化学構造を有するポリウロン酸(セロウロン酸)が白色沈殿として定量的に得られることが判明した。このようにして得られたセロウロン酸は、新しい水溶性ポリウロン酸としての利用が期待されるが、分子量分布を測定したところ、かなりの分子量低下が起こっていた。そこで、その原因を検討したところ、TEMPO-NaBr-NaC10の組合せによって副次的に生じるラジカル種によりセルロース主鎖が切断されることが明らかになった。従って、TBPのようなラジカル捕捉剤を共存させることにより僅かながら分子量の低下を制御することができた。また、本酸化反応機構を水溶性のデンプンを用いて詳細に検討したところ、中間体としてのC6アルデヒドが最大で40%程度生成していることが判明した。このアルデヒドの生成は、分子間及び分子内のヘミアセタール形成を進める。従って、天然セルロースをTEMPO酸化した場合、繊維間での架橋構造の形成により著しい湿潤強度が発現することが明らかになった。
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