研究概要 |
本研究の目的は樹木を始めとする植物類に広く保有されているフラボノイドの1種、クエルセチン(5,7,3',4'-テトラヒドロキシフラボノール)のもつ強い抗酸化能に注目したもので、ラジカル捕捉能発現のメカニズム、反応の様相や機構について化学的立場から考究することであった。本年度は報告者のこれまでの究成果をふまえ、クエルセチンのB環上の隣接する水酸基から始まる抗酸化反応機構の解明を中心に検討した。 本実験概要は次のようであった。始めに抗酸化反応機構解明実験のための基質、3,5,7-トリメチルクエルセチン(TriMQ)をクエルセチンから誘導調製した。次いで、TriMQをラジカル開始剤、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(AMVN)あるいは2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)と反応させ、それぞれ場合の反応生成物を単離し、構造を決定した。 実験の結果、調製した基質TriMQが反応に使える溶媒のいずれにも予想以上に難溶であることが判明した。そこで、やむをえず多量の溶媒を使い、時間をかけて反応させることにした。具体的には、反応基質が消失する時点をTLCでモニターして知り、この時点での反応液中の生成物を探すことにした。これまでに構造決定または同定できた生成物は先のクエルセチンの3位水酸基から始まる検討の場合とは違い、4種と少なかった。しかも、それらは反応当初の産物である2量体3種と反応終盤の産物である4,6-ジメチルサリチル酸であった。
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