研究概要 |
昨年の3,5,7-トリメチルクエルセチンと合成ラジカル類との反応生成物から反応機構を探る研究に続いて、今年は反応性の違うクエルセチンやエリオジクチオールをいろいろな条件下で、同様に反応性の違う1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)やガルビノキシルと個別に反応させ、ラジカル捕捉反応の様相を明らかたすることにした。具体的には、反応系のpH、溶媒ならびに温度条件を設定し、反応の経時的変化をラジカル捕捉定数の変動から考究した。 その結果、反応系のpHを変えて2種のフラボノイドをDPPHと反応させる実験では、速効性のクエルセチンと遅効性のエリオジクチオールのラジカル捕捉定数は共に、酸性側では大きくアルカリ性側では小さいことを確かめた。一方、同様のガルビノキシルとの反応では、両フラボノイドのラジカル捕捉定数は逆の傾向にあった。アセトン、エタノール、メタノールと、異なる溶媒系における実験は、いずれの場合も、ラジカル捕捉定数は溶媒ごとに一定の傾向をもって変わるのでなく、反応過程、時間で変わるものであった。また、反応系の温度変えた実験では、いずれの場合も、ラジカル捕捉定数は温度の上昇につれて大きくなることを確かめた。 以上、検討事例はまだ十分ではないが、実際にラジカル捕捉剤、抗酸化剤をより効果的に機能させるには、捕捉剤の性質を理解すること、消去しようとするラジカルの種類を知ること、働かせようとする場の環境を考慮することなどが必要であると考察した。
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