前年度の取り組みにおいて、1-hydroxybennzotriazole(HBT)をメディエーターとして共存させた部分精製ラッカーゼ処理によって、ポリエチレンおよびナイロンの高度な生分解が認められることを明らかにした。そこで本年度は、ラッカーゼ/HBT処理によるポリエチレンの分解機構について検討した。 ラッカーゼ/HBT処理したポリエチレン膜をFT-IR分析に供した結果、カルボニル基に由来する1720cm^<-1>付近に新たな吸収帯が出現した。ポリエチレンは、過度の熱処理や紫外線照射処理によって、カルボニル基を生成しながら分解されることが知られており、その際にはメチレン基から水素が引き抜かれることを初発とする「一連のラジカル反応」で分解されると提案されている。よって、ラッカーゼ/HBT処理によっても同様な反応が生じているものと考えられる。 なお、部分精製ラッカーゼを更に精製した結果、中性ラッカーゼと酸性ラッカーゼに分離され、中性ラッカーゼの方がポリエチレンおよびナイロンの分解性に優れていた。このことから、ラッカーゼアイソザイム間でHBTの酸化過程に差異があり、中性ラッカーゼの方がHBTとの親水性に優れていることが示唆された。
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