研究概要 |
木材が楽器用材等に多く用いられていることに注目し、音響に関する基本的な性質を検討した。具体的には10種類の木材を打撃したとき発する音の音圧レベルを騒音計で測定し、また音の成分を分析するためにFFTアナライザーによって周波数分析を行った。その結果、ヒノキ材、レッドラワン材、メープル材で高い音圧レベルを示した。周波数分析では、多くの木材で約2,000Hz周辺でピーク値が観察された。次に、同じ10種類の木材試験材を50名の被験者に打撃させたときの感性評価を行った。計器による物理量と人による感覚量を組み合わせて総合的な指標を求めた結果、レッドラワン材とメープル材が高い評価を示した。この結果を踏まえて、音響教材を製作するために、2つの種種を発音体の教材用材料として採用した。発音体の形状によって、発する音に著しく差が生じた。共同学習で大きさの異なる発音体を複数個作ることによって、製作物で演奏活動ができ、高い教育効果があることを明らかにした。 国内産の木材を中心に、樹種別の木材顕微鏡写真、切削面の顕微鏡写真等をコンピュータに入力してデータベース化し、必要なときに検索し入手できるシステムを構築した。これを用いて中学校技術の時間に授業実践を行い、教材として高い評価を受けた。データベースを木材加工の授業で利用することによって、中学生はものづくりの過程で木材の知識を定着することが明らかとなり、教育的効果が確認できた。 ものづくり教育を推進するためには、木材の諸性質を一般消費者に強く印象づける必要があり、これには講演会、公開講座、展示会等を通じて社会に広く働きかける必要があり、これらの行事に本研究で開発した教材は有効であると言える。
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