本研究の目的は、中国乾燥地域に砂漠緑化用として植栽されているポプラ類とマツ類の木材資源としての利用価値を判断するための基礎的知見を得ることである。(1)まず、ポプラ造林木(在来種のテリハドロと交配種のペキンハコヤナギ)の樹幹材質の成熟状況(成熟齢と成熟部位)について、道管要素長と木繊維長を指標に用いて成熟化に及ぼす樹幹肥大成長の良否、灌漑の有無、遺伝特性の違いの影響について検討した。その結果、肥大成長の大きい交配種のほうが肥大成長の小さい在来種よりも、また在来種でも灌漑を施すことによって肥大成長が促進されたことにより、成熟齢が10〜15年も早まるだけでなく、未成熟材の占める割合が減少していた。しかし肥大成長の良否は繊維長や道管要素長にはほとんど影響しなかった。(2)次に、(1)で用いたのと同じポプラ類を用いて、道管要素長の替わりに道管内腔径を用いて、樹幹材質の成熟状況が判断できるかどうか(道管径の材質指標性)について検討した。その結果、道管内腔径の水平変動と道管要素長の水平変動は極めて類似しており、しかも道管径の変動のほうが道管要素長の変動よりも安定していたことから、道管内腔径は樹幹内材質変動特性を判断する指標として非常に有効であることが判明した。(3)さらに、(1)で用いたポプラ類を用いて、ポプラに特有な材内結晶の分布状況(結晶量の水平変動特性)を検討した。その結果、結晶は辺材部ではほとんど存在せず、心材部から移行材部にかけて集中的に分布していた。さらに、結晶は道管内腔、木部繊維内腔、軸方向柔細胞内、放射組織内に存在していた。在来種の心材部にはとくに結晶が多量に存在していたが、灌漑を施すことによって材内結晶量が減少していたことは注目に値する。(4)最後に、東北部半乾燥地に植栽されている樟子松の材内材質変動特性について、仮道管長を指標として検討した。その結果、肥大成長の良否には関係せず、既報の温帯産マツ造林木において認められている成熟化とほぼ同じ傾向(髄から22〜25年で成熟すること)が認められた。 中国乾燥地域砂漠緑化樹木ポプラ類マツ類材質変動特性成熟化材内結晶木材利用
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