スギ・ヒノキ樹皮は農業用資材用として期待されているが、樹皮に含まれる抽出成分は植物に対して生長阻害作用を示すことが報告されており、それらの用途には適さないとされている。そこで、本研究では、スギ・ヒノキ樹皮成分の草本植物に対する生長阻害作用の詳細を明らかにすることと、その対策法の開発を主な目的とした。 スギおよびヒノキ樹皮を外樹皮と内樹皮に分離した後粉砕し、各樹皮粉をベンゼンで脱脂処理後、ソックスレー抽出器でメタノール抽出した。得られたベンゼン抽出物あるいはメタノール抽出物を脱脂綿培地に所定量添加し、25℃の恒温器中でキュウリ、ナス、ケナフなどの数種の草本植物の成長試験を行った。メタノール抽出物については更に、細かく分画し、化合物を単離分析するとともに、各分画物の生長阻害作用を調べた。 スギ、ヒノキ樹皮のメタノール抽出物は草本植物に対して強い生長阻害作用を示し、外樹皮よりも内樹皮の方がその作用な大きいことがわかった。更に、スギ、ヒノキともに内樹皮の抽出物量は外樹皮よりも圧倒的に多く、生長阻害作用に及ぼす内樹皮の重要性が明らかになった。スギ、ヒノキ内樹皮メタノール抽出物を溶剤分画後、各フラクションの生長阻害効果を調べた結果、1-ブタノール可溶部と分画残渣に生長阻害効果が見られた。1-ブタノール可溶部は更にエタノールを用いたGPCで分離され、カテキン、カテキン二量体などの化合物が単離された。カテキンも強い生長阻害効果を示したが、活性の主体は存在量の多い溶剤分画残渣およびGPC溶離残渣に存在し、これらは高速GPCおよび分解反応などにより、カテキンの数量体である縮合タンニン構造を持つものと推定された。すなわち、樹皮抽出成分の植物生長阻害作用は縮合タンニンが主な原因となっていることを明らかにした。他方、樹皮抽出成分の生長阻害作用を失活させる方法として、いくつかの化合物の添加が有効であることを明らかにした。
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