心持ち柱材の乾燥においては、問題となっている表面割れ等のセンシング技術が確立されていない。実験的には木材乾燥においてAE法の利用が試みられているが、木材中のAE波は減衰が著しいため実大材での研究例は少なく、特に心持ち柱材の乾燥における検討例はない。ここで、心持ち柱材の表面割れは材面の板目中央で起こることが一般である。そこで、釘を打ち込むなどして傷をつけることにより、最初の割れ発生位置を特定できるとの仮定の下、実証を試みた。 心持ち柱材の板目中央に釘を打ち込み、その釘のAEを乾燥過程で測定した。蒸煮中は、割れと関係なくAEの発生が見られた。その後の乾燥過程では、短時間のAE発生の増加が見られたものでは表面割れを生じていることから、表面割れをモニタリングできているものと考えられた。 さらに、高温乾燥で問題となる内部割れについても、AE測定を試みた。心持ち柱材の内部割れは、髄から対角線状に発生していることが多い特徴があることから、材面の幅方向の端から3cmの位置に深く釘を打ち込み、その釘のAEを測定した。内部割れがでない蒸煮中では、表面割れの測定と同様、AEの発生が多く見られた。すなわち、蒸煮中のAEは割れとは別の因子によるものであることが、改めて確認された。その後の表層が急激に乾燥する初期の過程で乾燥温度に関係なくAEの増加が見られた。一般に内部は未だに高含水率で内部割れが生じないとされる期間であり、内部割れに起因してはいないものと思われる。表層部でのみ収縮が生じ、内層部とのせん断変形(ずれ)から釘に接する木材組織で、微視的な破壊が起こったものと推察される。内部割れが発生した条件については、蒸煮後1日経過以降に、比較的長期にわたりAE発生の増加が見られた。すなわち、内部割れは一度に短時間で発生するのではなく、乾燥中期以降、比較的長時間にわたり少しずつ伸展していくことが推測された。
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