研究概要 |
宮崎県南部に生育するオビスギ群の各品種材を木材工業向けの材料として,その品質を的確に適合させるために,品質のバラツキの要因になっている各品種ごとの材質を究明した。オビスギ15品種について,おもにその胸高部位における放射方向での材質変動,すなわち組織・構造的な指標,さらに力学的性質を調べた。 オビスギ群品種中,4品種材の縦圧縮ヤング率は,100,000kg/cm^2の値を超えていた。とりわけ,チリメンドサ材は,15品種中,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さともに,最も高い値を示した。オビスギ群の代表的な品種であるオビアカ材は,15品種中,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さともに,中程度の値であった。 オビスギ品種材の組織・構造的な指標がその力学的性質に与える影響をみると,とくに縦圧縮ヤング率への容積密度数と仮道管2次壁中層(S_2層)ミクロフィブリル傾角の関与の仕方に,品種によって興味深い特徴が認められた。すなわち,大きな容積密度数と小さなS_2層ミクロフィブリル傾角を備えたチリメンドサ材は,2つの指標の相乗効果が現れたためか,最も大きな縦圧縮ヤング率の値を示した。ハアラ材は,容積密度数はさほど大きくないが,S_2層ミクロフィブリル傾角が小さいために,縦圧縮ヤング率が増大した。また,ゲンベエ材とタノアカ材は,S_2層ミクロフィブリル傾角が小さくはないが,容積密度数が大きいために,縦圧縮ヤング率の値も大きかった。大きな S_2層ミクロフィブリル傾角をもっているが,容積密度数がそれほど小きくないので,15品種中,中程度の縦圧縮ヤング率の値を示した。その一方で,小さな容積密度数と大きなS_2層ミクロフィブリル傾角をもつクロ材,トサアカ材,ヒダリマキ材などは,縦圧縮ヤング率の値が著しく低かった。また,カラツキ材は,S_2層ミクロフィブリル傾角の値はさほど大きくないが,容積密度数が小さいために,縦圧縮ヤング率の値もかなり小さかった。
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