木材分解力の大きな、ラッカーゼ活性の高い軟腐朽菌を選抜するために以下の項目について実験を行った。 1.数種の軟腐朽菌をグルコースのみとブナ木片添加ダンカン培地で培養し、それぞれの培地でフェノールオキシダーゼ活性と一電子酸化活性(2-keto-4-thiomethylbutyric acidからのエチレン発生)の経時的変化を測定した。この結果から、活性の高かった数種の軟腐朽菌を選択した。 2.1.で選択された菌をグルコースのみとブナ木片添加ダンカン培地で一定期間培養し、それらから菌体外粗酵素液を調整した。粗酵素液のフェノールオキシダーゼ活性がリグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼのいずれの酵素によるものかを解明した結果、ラッカーゼであることがわかった。 3.一電子酸化活性が水酸化ラジカルによるものか、酵素系によるものかを特定しようとした。担子菌の白色腐朽菌や褐色腐朽菌の水酸化ラジカル生成量は、ジメチルスルホキシドと反応させることによって測定できることを既に明らかにした。この方法によって、軟腐朽菌においても測定可能か測定条件を検討した。軟腐朽菌をグルコースのみとブナ木片添加ダンカン培地で培養し、一定期間ごとに培地にジメチルスルホキシドを添加し、水酸化ラジカル量を測定した。この結果から、軟腐朽菌の一電子酸化活性はもともと担子菌に比べて低いこともあり、この方法で水酸化ラジカルを測定するのは難しいことがわかった。 以上の結果から、木材分解力の大きなラッカーゼ活性の高い菌種を選抜した。
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