木材分解力の大きな、ラッカーゼ活性の高い軟腐朽菌からラッカーゼを分離・精製するために以下の項目について実験を行った。 1.前年度の実験の結果から木材分解力の大きな、ラッカーゼ活性の高い軟腐朽菌2種(Graphium sp. M-1-9とChaetomium sp. C-3-83a)を選抜した。供試菌それぞれをブナ木片添加培地で培養後、菌体外分泌物質を抽出し、硫安沈殿によって濃縮後、セントリプラスとビバスピンを用いて遠心ろ過することで脱塩した。 2.1.で得られたサンプルをDEAE Sepharose CL-6Bを用いてイオン交換クロマトグラフィー、Phenyl Sepharoseを用いて疎水クロマトグラフィー、さらにゲルろ過クロマトグラフィーを行って精製を試みたが、SDS-PAGEによって単一なバンドは得られなかった。さらに等電点電気泳動やNative PAGEを行ったが、単一なバンドにまで精製できなかった。また疎水クロマトグラフィー後に回収する分画を限定すると、ゲルろ過クロマトグラフィーを行うのと同じ効果があることがわかったので、以後はゲルろ過クロマトグラフィーの操作を省略することができた。 3.そこでSDS-PAGEを行った後、PVDF膜に転写し、染色後タンパク質のバンドを切り出した。それを用いてプロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列を決定し、相同性検索によってラッカーゼを特定することを検討中である。 4.今後さらに精製法を検討するとともに、酵素を多量に得る方法についても検討し、酵素の物理化学的性質を明らかにする予定である。
|