木材分解力の大きなラッカーゼ活性の高い軟腐朽菌(Graphium sp.M-1-9から、ラッカーゼを分離・精製し、その構造を明らかにし、種々の物理化学的性質を検討するために以下の実験を行った。前年度にそれ以前の実験の結果から精製法を変更した。その方法に従ってさらに精製を進め、酵素反応速度や最適pHを求めた。 1.供試菌をブナ木片添加培地で培養後、菌体外分泌物質を抽出し、硫安沈殿物を得た。 2.1.で得られたサンプルをオープンカラムによってPhenyl Sepharoseで疎水クロマトグラフィー、DEAE Sepharose CL-6Bを用いてイオン交換クロマトグラフィー、FPLCによってHiLoad 16/10 Phenyl Sepharose HP カラムで疎水クロマトグラフィーを行った。SDS-PAGEを行うとバンドが2本確認されたので、さらにSuperdex 75PC3.2/30によるゲルろ過クロマトグラフィーを行い、2本のピークを得た。ただし、この段階になるとサンプル量が極めてわずかになるので、以下の実験にはこの前の段階でのサンプルを使用した。 3.HiLoad 16/10 Phenyl Sepharose HP カラムによる疎水クロマトグラフィー後のサンプルを用いて、SDS-PAGEを行った後、PVDF膜に転写し、染色後タンパク質のバンドを切り出した。それを用いてプロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列を解析したが、解析できなかった。N末端がブロックされている可能性が考えられたので、バンドから抽出後、内部消化したものを解析する予定である。 4.HiLoad 16/10 Phenyl Sepharose HP カラムによる疏水クロマトグラフィー後のサンプルを用いて、数種の基質を用いてK_m、V_<max>を求めた。また最適pHは4.5であった。 5.収量は少ないが、白色腐朽菌と同様の低分子の水酸化ラジカル生成糖ペプチドを分離した。この物質は一電子酸化活性があり、その活性は水酸化ラジカルによるものであることがわかった。
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