研究概要 |
本研究はオカダンゴムシの造雄腺ホルモン(AGH)の遺伝子情報を基に、同じ軟甲亜綱であるオニテナガエビにおけるAGH遺伝子のスクリーニングとその作用機構の解明を目的とした。また、研究方法の基礎として、眼柄除去による造雄腺肥大化によりAGH遺伝子が確実に発現する造雄腺を確保する方法も開発した。 眼柄除去後2〜3週間経過すると、造雄腺が10〜30倍肥大することが磁認された。また、造雄腺移植実験の結果から、その肥大した造雄腺はAGH遺伝子が発現していることが示唆された。 オニテナガエビの正常と肥大化の造雄腺などの材料からTotal RNAを抽出し、RNAを増幅させてcDNAライブラリーの作成や3'-RACEなどを行いAGH遺伝子のスクリーニングを試みた。また、オカダンゴムシAGH遺伝子やオニテナガエビAGH遺伝子断片をプローブとしてオニテナガエビ造雄腺のin situハイブリを試みたが、造雄腺を肥大させた個体を用いたノーザンハイブリダイゼションでもAGH遺伝子の発現を検出することはできなかった。 そのためSP6,T7を結合させたプライマーを合成して、これを用いてRNAからcDNAを合成できるシステムを構築し、AGH遺伝子の増幅を試みた。次にオカダンゴムシのAGH遺伝子の塩基配列を基に幾つかのプライマーを合成し、PCRを行った結果、360bpの遺伝子を得ることが出来た。この遺伝子のオカダンゴムシAGH遣伝子との相同性は84.16%であったが、ダンゴムシ遺伝子のB chain, C peptideでは1塩基しか違いが無いが、A chainからは28.2%の相同性しか無かった。アミノ酸配列に変換して比較した場合、B chain, C peptideでは100%相同であたったが、A chainでは26残基中1残基しか相同ではなかった。また、このオニテナガエビはゲノム上にT7と全く相同な8-9bpの塩基配列を有するためT7を用いてPCRやcDNA合成反応を行うとゲノムに存在しているAGH遺伝子のコンタミを起こすことが明らかになった。そのため、SP6を用いた反応系により作成したcDNAを鋳型にしてPCR反応を行うことにより発現しているAGH遺伝子のパーシャルなクローニングが出来た。
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