平成13年度は、下記に示す3つを遂行すべき研究項目として挙げた。すなわち、 (1)病原性ビブリオ菌によるマガキ幼生血球の生体防御能不活化機構の解明 (2)ビブリオ増殖抑制細菌の感染抑制効果とその作用機序の検討 (3)ビブリオ増殖抑制細菌の共存による幼生血球の防御能の変化、である。 (1)は、細菌性壊死症を抑制するための方法を考える上で、最初に知るべき重要なものと考えた。本研究の結果、以下のことが明らかとなった。1.マガキ幼生の血球は.ビブリオ菌をほとんど貧食できない。2.幼生の血球は遊走能は持っている、しかしビブリオ菌に対しては全く遊走しない。そればかりか、血球の随意運動性自体もビブリオの菌体およびその培養上清によって阻害される。さらに、3.ビブリオ菌と共存した血球は6時間から12時間で80%以上が死亡する。すなわち、生体防御機構の中心である血球が、ビブリオ菌の作用によって重要な防御能である遊走能や運動性を阻害され、結果として菌を貧食することができない(貧食の欠如)。貧食を受けないので、ビブリオ菌はほとんど殺菌されることもなく生存し、逆に血球の方が細胞毒性因子の作用を受けて死亡した。 また、(2)の研究において、ビブリオ菌の感染を抑制し、幼生を整死から守る効果が高いオボマクログロプリンを血球の実験区に添加した結果、血球の死亡率は有意に減少した。すなわち、幼生の血球に対して毒性を示す因子は、幼生自体に対して致死性を示すものと同じであると考えられた。しかし、オボマクログロブリンの添加区でも血球の運動能は回復しなかった。 (3)ビブリオの増殖を抑制する拮抗細菌の共存実験に関しては、今年度すべての結果が出なかった。増殖抑制効果の高い菌(S21株)とプロテアーゼ活性阻害効果の高い菌(P14株)では、幼生血球の細胞死に対する抑止作用の強さが異なっていることは明らかにした。
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