平成14年度は、下記に示す3つを遂行すべき研究項目として挙げた。すなわち、(1)ビブリオ増殖抑制因子の感染抑制効果とその作用機序の検討 (2)ビブリオ増殖抑制細菌の共存による幼生血球の防御能の変化 (3)血球以外の防御因子に対するビブリオ菌の影響と抑制細菌の共存効果、である。 平成13年度の研究において、マガキ幼生がビブリオ菌の感染を防ぐことができない大きな理由と考えられること、すなわち生体防御機構の中心である血球が、ビブリオ菌の作用によって重要な防御能である遊走能や運動性を阻害され、結果として菌を貧食することができない(貧食の欠如)。さらに、貧食を受けないので、ビブリオ菌はほとんど殺菌されることもなく生存し、逆に血球の方が細胞毒性因子の作用を受けて死亡することを明らかにした。そこで、血球の防御能を発揮させて、感染を抑制する目的で、(1)の研究において、ビブリオ菌の感染を抑制し、幼生を斃死から守る効果が高いオボマクログロブリンを血球の実験区に添加した結果、血球の死亡率は有意に減少した。すなわち、幼生の血球に対して毒性を示す因子は、幼生自体に対して致死性を示すものと同じであると考えられた。しかし、オボマクログロブリンの添加区でも血球の運動能は回復しなかった。また、(2)では、ビブリオ菌の増殖を抑制する拮抗細菌の共存実験によって、幼生の防御能が発現できる環境づくりを試みた。その結果、増殖抑制効果の高い菌(S21株)とプロテアーゼ活性阻害効果の高い菌(PI4株)では、ビブリオ菌による幼生血球の細胞死に対する抑止作用の強さが異なっていることは明らかにした。PI4株では、血球に対する阻害作用も見い出された。(3)の研究では、血リンパ上清全体は抑制細菌との共存により細菌性壊死症を抑制した。しかし、フィブロネクチン・リゾチーム・レクチンなどそれぞれのタンパクは、ビブリオ菌の増殖を押さえることはできなかった。
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